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お勉強ノート あるいは、未来の自分へ向けた経過報告

お勉強のためのメモです。主なコンテンツは京都新聞の社説と心理学関係書籍の縮約、英文教科書の和訳です。目指しているのは「チャーリー・ゴードンの『経過報告』」。

第1章 信頼のパラドックス(5)

山岸俊男「信頼の構造」縮約

「見極め」実験(原文:2986字 縮約:995字)
 第3パラドックスという表現の背後には、この2つの実験の先を行く実験がある。
 この実験(菊池・渡邉・山岸,1997)では、「囚人のジレンマ」と呼ばれる状況で、自分のお金を相手に渡すかどうかの決定を行う。囚人のジレンマとは、2人の間で互いに協力しあった方が非協力的な行動をとりあうよりも望ましいが、相手の選択のいかんにかかわらず、それぞれの人間にとっては非協力を選択したほうが協力を選択するよりも望ましい結果が得られる関係を意味している。このような関係では、二人共が自分の利益だけを追求して行動すると、互いに非協力を選択しあって、互いに望ましいはずの相互協力が達成できなくなってしまう。
 この実験の目的は、囚人のジレンマ関係において、相手の行動を正しく予想できるかどうかを調べることにあった。そのため実験に先立ち、まったく別の実験として、「ごみ問題についての討論実験」に参加し、「人間性」についての多少の情報を与える機会を作った。
 この実験で知りたかったもう1つのことは、参加者の一般的信頼レベルの差によって、他の参加者の行動についての予測の正確さに違いがあるかどうかを調べることであった。
 実験参加者は、複数の参加者との間でペアをつくる。それぞれの参加者が誰とペアを組んでいることを知らせないまま、参加者は、複数の誰かとペアを組んでいると告げられ、誰か分からない相手と、協力するか協力しないかを決定する。つまり、相手に対する好き嫌いをもとに決定をすることができないようデザインされた条件である。協力するか協力しないかの決定は、特定の相手に対する態度ではなく、一般的な人間性を強く反映することになる。
 協力・非協力の決定が終わると、参加者に対して、どの2人が囚人のジレンマ関係の相手であったかが告げられ、その後、2人の相手のそれぞれが相手がとった行動を予測してもらう。
 実験の結果は、予測の正確さに、参加者の一般的信頼レベルによる差が存在すること、すなわち、高信頼者は低信頼者や中信頼者と比べ、比較的短時間の接触をもった相手の行動の予測をより正確に行っていることを示している。この差は統計的に有意な差である。他人を信頼する人間は騙されやすい「お人好し」だとする「常識」に反する結果であり、高信頼者は相手の信頼性を示唆する情報に対してより敏感な「注意深い」人間だという、前の実験の結果と一貫していると言える。