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お勉強ノート あるいは、未来の自分へ向けた経過報告

お勉強のためのメモです。主なコンテンツは京都新聞の社説と心理学関係書籍の縮約、英文教科書の和訳です。目指しているのは「チャーリー・ゴードンの『経過報告』」。

第2章 信頼概念の整理(4)・・・信頼と安心

山岸俊男「信頼の構造」縮約

信頼と安心(原文:2904字 縮約:967字)

 本書で扱う信頼とは、相手が自己利益のために搾取的な行動をとる意図を持っていると思うかどうかに関わる限りでの信頼である。しかし、信頼の意味をこのように限定した場合にも、まだ、2つの異なった内容 ー 安心と信頼 ー が含まれていることに注目する必要がある。

 社会的不確実性の存在する状況で、相手が利己的にふるまうことはないだろうと期待することが、その相手を信頼することと言える。この意味での信頼を相手にもつのは、1つは、相手がそんなに「悪い」人間のようには見えない場合だろう。相手が信頼に値する行動を取る意図があると期待できるかどうかは、その多くの部分を、相手の人間性の評価によっている。もう少し一般的に言えば、広い意味での相手の行動傾向についての知識にもとづいている。

 しかし、相手が卑劣な人間でも、決して自分を搾取するような行動に出ることはないだろうと確信できる場合がある。それは、搾取的に行動することが相手自身の利益を損なうことが分かっている場合である。

 ここで「針千本マシン」という架空の機械を考えてみよう。手術によって人間の喉に埋め込まれ、その人間が約束を破ると自動的に千本の針を喉に送り込む機械である。さて、約束を破れば必ず千本の針を呑み込むようになっているとしよう。そのことを知っているものは誰も皆、その人間が絶対に、少なくとも意図的には約束を破らないと確信できる。この場合には、相手が嘘をつく意図は持っていないという期待は、相手にとっての自己利益にもとづいている。

 本書では、信頼と区別される別の概念として、「安心」の概念を用いることを提案する。「安心(assurance)」とは、相手が自分を搾取する意図を持っていないという期待の中で、相手の自己利益の評価に根ざした部分である。例えば「針千本マシン」が埋め込まれている相手が約束を破らないだろうと言う期待は、この定義によれば信頼ではなく安心にあたる。これに対して「信頼(trust)」は、相手が自分を搾取しようとする意図を持っていないという期待の中で、相手の人格や相手が自分に対してもつ感情につついての評価にもとづく部分にあたる。

 本書ではこれまでに何度も、信頼は社会的不確実性の存在を前提とすることを強調してきた。これに対して安心は、社会的不確実性が存在しない状況についての認知である。